声を かけず 目礼だけで すれ違い 互いの 朝を 守る その 一呼吸が 画面の 温度を 上げも 下げも せず 透明な 緊張を 残します 名も 知らぬ 誰かの 生活が そっと 重なり 旅の 時間に 奥行きが 生まれます 湖面の 静けさへ 迷惑を かけない 配慮が 心に 居場所を つくり 写真へ 滴ります
古い メカが 指に 抵抗を 返し クリックの 音が 谷に とける その 瞬間に 次の 枚数を 欲張らず 余白を 受け入れる 決意が 生まれます 焦りは 画面を 浅くし 呼吸が 整えば 静けさは さらに 広がります 指先の 温度を たよりに 速度を 選び 鼓動と 揃え 一枚を 守ります
リュブリャナの 小さな 宿で ナイトスタンドの 上に 現像タンクを 置き ゆっくり 反転を 重ねる 水音は 眠る 町の 呼吸に 合い 露光の 記憶が ほどけます 失敗だと 思った 一枚が 朝日に ふいに 輝く 瞬間も あります 温度計の 目盛りを 見つめ 慌てず 止め 洗いを 軽くし 静けさを とどめます